九条の大罪が教えてくれた『星の王子さま』──「大切なものは目に見えない」を大人になって読み返した

思考・読書

Netflixドラマ『九条の大罪』を観ていて、ある場面で思わず手が止まりました。星の王子さまを大人になって読み返した記録です。

将来に思い悩む20代の女性に、主人公の九条弁護士がそっと差し出す一冊の本。それが『星の王子さま』でした。

「あ、この本か」と思った瞬間、小さい頃に読んだあの記憶がふわっと蘇ってきました。子供のころは「不思議な話だな」と感じた程度だったのに、大人になってから読み返すと、まったく違う顔を見せてくれる本でした。

「大切なものは目に見えない」——この一文を、子どもの頃に読んだときと、30代で読み返したときとでは、まったく違う重さで受け取りました。

きっかけは、Netflixドラマ『九条の大罪』でした。弁護士の九条が、将来に迷う若い女性に一冊の本を手渡すシーン。その本が『星の王子さま』でした。「なぜ、よりにもよってこの本を?」という疑問が頭に残って、久しぶりに本棚から引っ張り出しました。

大人になってから読むと、まったく違う本になる

この本は表向きは子ども向けの童話です。でも読んでみると、むしろ大人のほうが刺さる内容だと分かります。子どもには「そういうもんか」と流れていた言葉が、社会人になって読むと、じわりと胸に刺さってくる。

特に印象的なのは、大人たちへの皮肉です。数字ばかりを気にして、本質を見ようとしない大人たち。「この家はいくらか」「あの人の年収は」という話しかできない大人への批判が、あちこちに散りばめられています。サラリーマンとして日々数字を追っている自分には、耳が痛かった。

読んで刺さった3つの言葉

1.「きみのバラをかけがえのないものにしたのは、きみがバラのために費やした時間だ」

王子さまは自分の星にあるバラだけが特別だと思っていました。でも地球には無数のバラが咲いている。それを知って傷つく王子さまに、キツネが言う言葉がこれです。

読んだとき、仕事のことを思いました。「この仕事に意味があるのか」と感じる瞬間が誰にでもあると思います。でも、そこに費やしてきた時間と努力が、その仕事を「かけがえのないもの」にしていく。意味は最初からあるのではなく、時間をかけることで生まれるのだと感じました。

2.「大切なものは目に見えない」

本書でもっとも有名な一文です。子どもの頃は「そうだね」と流していたこの言葉が、大人になると重く響きます。

スマホの画面時間、年収、フォロワー数、評価点数……現代は「見えるもの」だらけです。でも信頼関係、安心感、好奇心、誰かと過ごした時間の温かさ——本当に大事なものは数値化できない。そのことを、この一文は静かに、しかし強く思い出させてくれます。

3. 大人は数字でしか物事を理解できない

冒頭で、語り手の「ぼく」が子どもの頃に描いたボアの絵を大人に見せると、みんな「帽子だ」と言う。実はボアが象を飲み込んだ絵なのに、大人は見えている形だけで判断し、想像力を働かせない——というシーンです。

これを読んで、「自分もそうなっていないか」と考えました。会議で資料の数字だけを見て、その背景にある苦労や文脈を想像しようとしていないこと、ないでしょうか。私は正直、あります。

九条が、なぜこの本を選んだのか

ドラマの文脈で考えると、九条弁護士がこの本を渡した理由は明確だと思います。将来に迷い、お金や数字に振り回されている若い女性に対して、「本当に大切なものは目に見えないところにある」というメッセージを送りたかったのではないか。

法律の世界は、書類、条文、証拠——すべて「見えるもの」で動きます。でも人の痛みや、何かを大切にしたいという気持ちは書面には現れない。そのギャップを知っている弁護士だからこそ、この本を選んだのだと感じました。

読み返して気づいた、自分の「バラ」

今回読み返して、自分にとっての「バラ」は何だろうと考えました。

仕事ではなく、人間関係でした。長く付き合っている友人や、一緒に時間を過ごしてきた家族。それに費やしてきた時間の積み重ねが、かけがえのないものにしている。分かってはいたけれど、読み返すことで改めて実感しました。

ミニマリストとして「モノを減らす」ことを意識してきましたが、この本を読んで「時間の使い方を絞る」ことも同じくらい大切だと気づきました。何に時間を使うかが、何を「かけがえのないもの」にするかを決める。

今日からできるアクション

  • 本書を手元に置いておき、迷ったときにパラパラと開く習慣をつける
  • 「自分が時間を使ってきたもの」をリストアップして、本当に大切なものを確認する
  • 会議や仕事で、数字の背景にある文脈を想像する時間を1分だけ取る

数字と効率だけで動く毎日に疲れたとき、この薄い本が静かに道標になってくれます。大人になったからこそ読むべき一冊です。

『星の王子さま』ってどんな本?

飛行機が故障して砂漠に不時着した「僕」が、遠い小さな惑星からやってきた王子さまと出会う物語です。

王子さまはさまざまな星を旅して地球にやってきました。それぞれの星には、権威にこだわる王様、人に褒められることしか求めない男、数を数え続けるビジネスマン……大人たちが暮らしていて、王子さまはそのたびに首をかしげる。

「大人って、不思議だな」と。

サン=テグジュペリが書いたこの本は、子ども向けの童話に見えて、実は大人に向けて書かれた寓話です。読むたびに、刺さる言葉が変わる。そこがこの本の底知れない魅力だと思います。

九条弁護士がこの本を贈った理由(考察)

ドラマの中で、九条弁護士がなぜこの本を選んだのか、明確な説明はありません。でも、読み返してみて、ひとつ腑に落ちることがありました。

この本でもっとも有名な言葉があります。

「大切なものは、目に見えない」

目に見える「お金」や「損得」「地位」だけで動く世界に疲れていた彼女に、九条弁護士は言いたかったのではないでしょうか。「あなたが本当に大切にしたいものは、数字では測れないところにあるんじゃないか」と。

直接言葉で諭すのではなく、一冊の本を手渡す。その選択がまた、いかにも九条らしいと思いました。

大人になってから読んで刺さった3つの言葉

①「きみのバラがかけがえないのは、きみがそれに費やした時間のせいなんだ」

王子さまのバラは、宇宙中に5000本あるバラとまったく同じ見た目をしています。それでも王子さまにとってのバラは特別な一本。なぜか。

それは、水をやり、風よけをして、話しかけて、時間を注いできたから。

仕事でも人間関係でも、「替えのきくもの」「効率的なもの」を選び続けていると、いつの間にか「かけがえのないもの」を失っていることがある。この一節に、大人になってからの方が深く刺さりました。

②「おとなは、だれも、はじめは子どもだった。しかし、そのことを忘れずにいるおとなは、いくらもいない」

サン=テグジュペリが本書の冒頭で書いた言葉です。

サラリーマンとして働いていると、いつしか「現実的に考えよう」「リスクを取るな」という声が自分の中で大きくなっていきます。子供のころに感じていた「なんで?」「面白そう!」という純粋な好奇心が、知らないうちに薄れていく。

この言葉を読んで、少しだけ恥ずかしくなりました。

③「ものごとはね、心で見なくてはよく見えない」

キツネが王子さまに教えるこの言葉が、今の自分にはいちばん響きました。

データや数字、評価、効率。そういうもので物事を判断することに慣れすぎると、「これは自分にとって本当に大事なのか」という感覚が鈍くなっていく気がします。

心で見る、という感覚を取り戻すために、この本はとても良い処方箋になりました。

今日からできるアクション

  1. 手元に一冊置いておく
    短い本なので、疲れたときや迷ったときにさっと読み返せます。新潮文庫版は薄くて持ち歩きやすいのでおすすめです。
  2. 「自分のバラ」を書き出してみる
    自分がこれまで時間を注いできたもの、大切にしてきたものを改めてリストアップしてみる。それを振り返るだけで、今の優先順位が整理されることがあります。
  3. 子どもだったころの「好き」を思い出す
    何も考えずに夢中になっていたこと、楽しかったこと。今の自分から遠ざかったものの中に、意外と大事なヒントが眠っています。

まとめ

『星の王子さま』は、子どものころに読んだ記憶はあっても、大人になってから読み返したことがない人が多い本ではないでしょうか。

九条の大罪でこの本に出会い直したことで、「もう一度ちゃんと読んでみよう」と思えたのは、ドラマの大きな贈り物だったと感じています。

将来に迷っている人、損得だけで動くことに疲れた人、「大切なもの」を見失いそうになっている人に、静かに手渡したい一冊です。

星の王子さま

サン=テグジュペリ(訳:河野万里子)

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