過去の失敗をいつまでも引きずっていませんか。あるいは、老後のお金や将来のことを考えるたびに不安が膨らんで、何もできなくなるような感覚。
サラリーマンとして日々を過ごしていると、そんな「動けない瞬間」が思いのほか多くあります。頭ではわかっていても、体が前に進まない。そういう状態のとき、10年ぶりに手に取ったのが「嫌われる勇気」でした。
どんな本か
「嫌われる勇気」は、心理学者アルフレッド・アドラーの思想を、哲人と青年の対話形式でわかりやすく解説した一冊です。著者は哲学者の岸見一郎さんとライターの古賀史健さん。
アドラー心理学の核心は、「人間の悩みはすべて、対人関係の悩みである」という考え方です。そして、過去の出来事が今の自分を決めているのではなく、今の自分が過去をどう意味づけるかで生き方が変わる、という「目的論」の立場に立っています。
初めて読んだのは10年ほど前。当時はなんとなく「そういうものか」と流してしまっていたのですが、再読してみると、刺さる場所がまるで違っていました。
気づき①「過去は関係ない」という言葉の意味がやっとわかった
アドラー心理学では、「トラウマは存在しない」と言い切ります。初めて読んだときはこの言葉がひっかかりました。「そんなはずはない、過去の経験は確かに自分に影響している」と感じていたからです。
でも再読して、ようやく腑に落ちました。アドラーが言いたいのは「過去の出来事がなかった」ということではなく、「その出来事に、今の自分がどんな意味を与えるかは自分で選べる」ということです。
過去の失敗を「だから自分はダメだ」という証拠として使い続けることも、「あの経験があったから今がある」と意味を変えることも、どちらも自分次第。言葉にすると当たり前に聞こえますが、それを「選んでいる」と意識できているかどうかは、別の話です。
過去にとらわれて身動きが取れなくなっているとき、この視点は小さな出口になってくれました。
気づき②「課題の分離」で、肩の荷が半分下りる
この本でもっとも実用的だと感じたのが「課題の分離」という考え方です。
「これは誰の課題か?」をはっきりさせることで、余計な荷物を下ろせるという話です。他人の評価を気にしすぎたり、家族の将来を一人で背負い込んだりしているとき、それが「自分の課題」なのか「他者の課題」なのかを分けて考える。
老後の不安で言えば、「将来どうなるかわからない」という漠然とした恐れをずっと抱えていても、今日できることをやるしかない。他人がどう生きるか、社会がどうなるかは、自分の課題ではありません。
それは「無責任になれ」ということではなく、「自分がコントロールできる範囲に集中しなさい」ということです。再読して、これが一番すっと入ってきました。
気づき③「今ここ」に戻ることが、不安への処方箋
将来や老後への不安は、ほとんど「まだ来ていない未来」への恐れです。アドラー心理学では、過去でも未来でもなく、「今ここを生きる」ことを繰り返し強調します。
これは精神論ではなく、かなり現実的な話だと感じます。不安で身動きが取れなくなっているとき、頭の中では「もし〇〇になったら」という仮定のストーリーが自動再生されています。でも実際に今、この瞬間に起きていることは何かと問われると、たいてい何も起きていない。
「今できることをやる」という当たり前のことが、案外難しい。でも、それに集中すること自体が不安を静める一番の方法だというのは、再読して改めて実感しました。
今日からできる3つのアクション
読んで試してみようと思ったことを3つ挙げます。
- 過去の出来事に「別の意味」をつけてみる
ずっと引きずっている失敗や後悔を一つ取り出して、「この経験から得たものは何か」と問い直してみる。答えがすぐ出なくてもいい。問い自体が変わることで、少しずつ視点がほぐれていく。 - 「これは自分の課題か?」を一日一度確認する
モヤモヤしたとき、「これは自分がコントロールできることか」を確認する習慣をつける。他者の課題と気づいたら、静かに手を離す。 - 不安になったら「今日できること」だけ書き出す
将来や老後の不安を感じたとき、手帳に「今日できること」だけを3つ書く。未来ではなく今日に戻すための、小さなアンカーとして。
まとめ
10年前に読んだとき、「面白いけど難しい本」という印象でした。でも今回の再読では、書いてあることがずっとリアルに感じられました。それだけ、過去のとらわれや将来不安と向き合う場面が増えたということかもしれません。
過去の出来事にとらわれていたり、老後や将来への不安で身動きが取れなくなっているとき、この本は「自分の芯」を取り戻す手助けをしてくれます。読むたびに、新しい気づきがある一冊です。



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