「なるようになる」と思えない人へ。養老孟司の言葉が肩の力をふっと抜いてくれた

思考・読書

毎日を「うまくやらなければ」と思いながら過ごしている自分に、少し疲れていませんか。

サラリーマンとして働いていると、知らず知らずのうちに「こうあるべき」「もっとしっかりしなければ」という考えが積み重なります。ミニマリスト的な生き方を意識しているつもりでも、頭の中だけはモノが増え続けていることに気づいて、うんざりすることがあります。

「もう少し楽に生きていけないだろうか」と、ぼんやり思い続けていたある日、その答えのヒントをまったく意外な形で受け取りました。

電車の向かいの席で出会った本

きっかけは通勤電車の中でした。席に座ってぼーっとしていたとき、ふと向かいの人が持っている本のタイトルが目に入ったのです。

「なるようになる。」

たった6文字。でも、その瞬間、何かが心に引っかかりました。「なるようになる」という言葉、頭ではわかっているつもりでも、実際にはなかなかそう思えないんですよね。むしろ「なるようにしなければ」といつも動いている。その日の帰り道に本屋へ寄り、手に取り、そのまま購入しました。著者は養老孟司さん。『バカの壁』で有名な解剖学者です。

どんな本か

この本は、養老さんが86歳のときに書いた初の本格的な自伝的エッセイです。幼少期の記憶から、昆虫採集との出会い、愛猫まるとの日々、死生観まで、自分の人生を静かに振り返りながら語っています。難しい学術的な議論はほとんどなく、一人の人間として「自分はこんなふうに生きてきた」という事実が淡々と、でも温かく綴られています。読んでいると、不思議と肩の力が抜けてくる一冊です。

気づき①「適当で良い」という許可を自分に出す

読んでいてまず目に留まったのは、養老さんが「適当で良い」という言葉を自然に使っていることでした。

「適当」という言葉は、最近では「いい加減」とネガティブな文脈で使われがちです。でも本来の意味は「ちょうど良い具合」。養老さんが言う「適当で良い」は、完璧主義を手放すことへの招待でした。

サラリーマンをしていると、全部に全力を注ぎたくなってしまうことがあります。でも物理的に不可能だし、そもそも全部に100点を出し続けることは、人間の設計上向いていない気もします。「これは70点で良い」と意識的に決める。そういう「適当さ」を取り戻すことが、じつは長続きする生き方に繋がるのかもしれません。

読んでいて、「あ、自分に許可を出せていなかったんだ」と気づかされました。

気づき②体を動かすことが思考の解毒剤になる

養老さんは長年にわたり、フィールドワークで昆虫採集を続けてきた方です。世界中を歩き回り、虫を探し、体を動かしながら自然と向き合ってきた。この話を読んでいて、「頭だけで考えすぎると行き詰まる」という自分の実感と重なりました。

デスクワーク中心の生活をしていると、考えは際限なく巡り続けます。夜に布団へ入っても頭が静まらない。あれこれ考えては消え、また浮かぶ。そんな状態に身に覚えのある方は多いのではないでしょうか。

養老さんが体を動かし続けてきた人生を見ると、「悩んだらまず外に出て歩く」という行動の大切さを改めて感じます。考えが詰まったとき、じつは答えは頭の中にはなくて、体を動かした先にある、という気がしてなりません。

気づき③「自分の見たいものしか見ない」という壁に気づく

養老さんの本で一番ハッとさせられたのが、「人は自分が知りたいことしか見ていない」という指摘です。

これは養老さんの代名詞である「バカの壁」の延長線上にある話ですが、この本では身近なレベルで語られています。「自分が知りたいことだけを見ていると、知らないうちに壁ができる」というのです。

思い当たることがありました。ニュースも、読む本も、SNSでフォローする人も、自分が心地よいと感じるものに偏っている。同じような意見ばかりに囲まれていると、それが世界のすべてに見えてくる。これは情報収集だけの話ではなく、仕事や人間関係でも同じです。

「たまには自分が好きじゃないジャンルの本を読んでみる」「普段なら流してしまう意見をちゃんと聞いてみる」、そういう小さなことが、自分の壁を少しずつ崩していくのかもしれません。

今日からできる3つのアクション

読んでみて、実際に試そうと思ったことを3つ挙げます。

1. 「70点OK」と意識的に決める
全部に全力を注ぐのをやめ、タスクごとに「これは70点でいい」と決める練習をする。完璧主義が首を絞めていると感じる場面で試してみる。

2. 悩んだらまず10分外を歩く
考えが詰まったとき、パソコンを閉じて外へ出る。体を動かしてから考え直すと、意外に頭がクリアになる。このルーティンを小さな習慣として取り入れてみる。

3. 週に一度、「自分が選ばなそうなもの」を読む
興味関心の外にある本、記事、コンテンツを意識して一つ選ぶ。視野を少しずつ広げるための小さな積み重ねとして。

まとめ

「なるようになる」という言葉は、あきらめや無責任さの言葉ではないと、読んでいてそう感じました。自分でコントロールできないことに力を使いすぎず、目の前のことに丁寧に向き合う。86歳まで生きてきた養老さんが、静かに、でも確かにそう語っているような気がします。

もう少し楽に生きていきたいと思っている方に、ぜひ手に取ってほしい一冊です。電車の向かいの席の人が読んでいた本のタイトルが目に入ったということはそういう情報をちょうど求めていたんだと思った体験でした。

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