今日から新社会人になったみなさん、入社おめでとうございます。
……そして、少し申し訳ございません。
なぜかと言うと、あなたが希望と緊張を胸に抱えながら人生初の出勤を果たした今日この日に、私はブログで「定年後が怖い」という記事を書いているからです。
まだ1時間も働いていない新社会人に向かって、いきなり”定年後”の話をぶつけるのは、さすがにタイミングが悪すぎる自覚はあります。エイプリルフールのウソでもありません。本当の話です。
でも、逃げないで聞いてください。これはある意味、「未来のあなた」に向けた手紙のようなものでもあります。今日をスタート地点にして、少しだけ先の「このまま働き続けたら、どうなるんだろう」という問いを、一緒に考えてみませんか。
サラリーマンをしていると、ふとした瞬間に「このまま定年まで働いて、その後どうなるんだろう」と思うことはありませんか。
私はあります。しかも、最近その頻度が増してきています。
仕事は嫌いではないし、毎日それなりに充実しているつもりです。でも、定年というゴールテープを切った先に何があるのか、具体的なイメージがまるで湧かない。「老後2000万円問題」みたいな話は聞いたことがあるけど、お金の話だけじゃない何か、もっとモヤモヤした不安がずっと心のどこかにある感じがしていました。
そんなときに手に取ったのが、楠木新さんの著書『定年後 50歳からの生き方、終わり方』(中公新書)です。
この本は「定年後の現実」を正直に書いた本です
著者の楠木新さんは、大手生命保険会社で長年勤め上げた後、50代でキャリアコンサルタントとして独立した方です。本書は、シニア社員や定年退職者、地域で活動する人々への豊富な取材をもとに書かれています。
ひと言で言うと、「定年後に待ち受ける現実を、直視させてくれる本」です。
「定年になれば自由で楽しい毎日が待っている」という楽観的な話では、まったくありません。むしろ逆で、定年後に「イキイキしている人は2割未満」という現実から話が始まります。
最初はちょっと怖くなりましたが、読み進めると、「だからこそ、今から準備できることがある」という話に変わっていきます。お説教ではなく、著者自身の体験や取材相手のリアルなエピソードを交えながら、静かに、でもしっかりと問いかけてくる本でした。
読んで刺さった3つのポイント
1. 名刺がなくなったとき、人は何者になるのか
定年退職で失うものは「収入」だけではありません。本書で最も印象に残ったのが、「名刺を失うことの喪失感」についての記述でした。
会社員でいる間は、「○○株式会社の△△です」という肩書きがあります。それがアイデンティティの一部になっている。でも定年後は、その看板がなくなる。「自分は何者か」を一から説明しなければならない状況になる。
これ、なんとなくわかる気がして、ドキッとしました。私自身もミニマリスト的な考え方が好きで、「モノに縛られない生き方」を意識しているつもりですが、「会社」や「肩書き」というものには、意外と縛られているかもしれない。
定年になってその看板が外れたとき、素の自分に何が残るのか。それを考えておかないといけないな、と思わされました。
2. 「黄金の15年」を輝かせるかどうかは、50代の準備次第
本書で著者が提唱しているのが、60〜74歳を「黄金の15年」と呼ぶ考え方です。体もまだ動いて、時間もある。この時期を自分らしく過ごせるかどうかが、人生後半戦の質を決める、と著者は言います。
そして、その準備は定年してから始めても遅い、というのが著者の主張です。
会社一筋で生きてきた人が、定年翌日から急に「趣味を楽しむ人」「地域に根ざした人」になれるかというと、なかなかそうはいかない。人間関係も、居場所も、習慣も、突然生まれるものではないからです。
「今、自分には会社の外にどんな接点があるか」と考えてみると、正直ちょっと心もとない…というのが私の本音でした。
3. 「死から逆算する」という発想
本書の終盤に「死から逆算してみる」というパートがあります。残り時間を意識することで、今の生き方が変わる、という話です。
これ、ミニマリスト的な考え方と通じるものがあると思いました。本当に必要なものだけを持つ、という考え方の根っこには「限りある時間と空間をどう使うか」という問いがあります。それと同じで、残り時間を意識することで「今、本当に大事なことは何か」が見えやすくなる。
「定年後のこと」は、遠い未来の話ではなく、今日の選択や習慣と地続きなんだ、というのが、この本を読んで一番強く感じたことでした。
今日からできること
この本を読んで、「すぐ実践できること」をいくつか考えてみました。
① 会社の外のつながりを一つ増やしてみる
趣味でも、地域の活動でも、オンラインコミュニティでもOK。「会社員」以外の顔を少しずつ作っておく。
② 自分の「好きなこと・得意なこと」を書き出してみる
「もう一人の自分」を見つけるためのファーストステップ。仕事と関係ない自分の強みや興味を、箇条書きでいいので書き出してみる。
③ 「10年後の自分」を想像してみる
定年後の話とはいえ、10年先に何をしていたいかをぼんやりでも描いてみると、逆算して今やることが見えてくる。
まとめ
『定年後』は、「老後の不安を煽る本」でもなければ、「バラ色の定年ライフを描く本」でもありません。現実を直視した上で、「だからこそ今から動こう」という本です。
読む前は、「定年はまだ先の話」と思っていました。でも読み終えたとき、「準備は今日からでしょ」という気持ちに切り替わっていました。
サラリーマンとして日々を送りながら、このまま定年まで走り続けることへの漠然とした不安を持っている方に、ぜひ読んでほしい一冊です。定年後の話でありながら、「今日の自分の生き方」を問い直すきっかけをくれる本でした。


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