一度気になり出すと、そこばかり見えてくる。そんな経験はありませんか。私はいま、まさにその状態です。きっかけはB子さんの「俺よりマシ」でした。前回この曲について記事を書いたのですが、音楽が心地よくて、そのあとも繰り返し見てしまうのです。
そして、ある一節が引っかかりました。「お尻ペンペン」というフレーズです。この「ペン」って、本当にただの擬音なのだろうか。そう思って調べてみました。結論から言うと、「俺よりマシ」のペンには、意味が3つ重なって見えます。今日はその話です。
前回の記事のあと、まだ見続けていました
前回は、この曲がダークなのに励まされる理由を書きました。あわせて「B子」の読み方の仕掛けにも触れています。まだの方はこちらからどうぞ。
B子さんの「俺よりマシ」がダークなのに励まされる。”B子”の読み方の秘密にもやられた話
正直、そこで満足していました。しかし、その後も再生が止まりません。何度も聴いていると、耳が細部に向かいます。つまり、意味より先に音が気になり始めるのです。
そこで引っかかったのが「ペンペン」でした。日本語としてはただの擬音です。ただし、この曲のモチーフは日本の話ではありません。舞台はアメリカです。そう考えた瞬間、「Pen」という英単語が頭に浮かびました。
「俺よりマシ」のペンには3つの意味がありそう
調べてみると、3つの層が出てきました。順番に見ていきます。
①いちばん素直な「ペンペン」=擬音語
まずは、そのままの意味です。お尻を軽く叩くときの音ですね。子どもを叱るときの、あの表現です。つまり「お仕置き」を意味します。ほとんどの人は、ここで受け取って終わります。私も最初はそうでした。
ただし、この曲の文脈だと少し引っかかります。歌われているのは、大人が受けた重い罰だからです。
②収監先「Pennsylvania(ペンシルベニア州)」のPenn
ここからが本題です。この曲のモチーフになった人物は、実際に収監されています。報道によると、2025年6月16日に連邦刑務所へ出頭しました。その場所が、ペンシルベニア州アレンウッドの低警備施設です。フィラデルフィアから北西へ約200キロの位置にあります。
興味深いのは、本人の希望が通らなかった点です。当初はカリフォルニア州の施設を望んでいたとされます。しかし、決まったのは反対側の東海岸でした。西海岸の自宅からは直線で3000キロ以上あります。つまり「Penn」は、単なる地名ではありません。望んだ場所に行けなかった、という事実も含んでいます。
③英語スラングの「pen」=刑務所
3つ目が、いちばん驚いたところです。英語には「the pen」というスラングがあります。これは刑務所を指す言い方です。penitentiary(ペニテンシャリー)を略した言い方です。海外の映画やドラマでは、わりとよく出てくる表現です。ただし、日本の学校英語では、まず習いません。
ここで気になったことがあります。英語には、刑務所を指す単語がほかにもあるのです。代表的なのが jail と prison です。日本語ではどれも「刑務所」と訳されがちです。しかし、辞書のうえでは役割がはっきり違います。
jail・prison・penitentiary の違い
| 単語 | 近い日本語 | 運営主体 | 収容される人 |
|---|---|---|---|
| jail | 拘置所・留置場 | 市や郡などの自治体 | 裁判を待つ未決の人/おおむね1年未満の短期刑 |
| prison | 刑務所(一般語) | 州または連邦 | 有罪が確定し、おおむね1年以上の刑を受けた人 |
| penitentiary | (重警備の)刑務所 | 主に連邦 | 長期刑・重い罪の受刑者 |
なお、この区分はアメリカ英語のものです。イギリス英語では、jail と prison をほぼ同じ意味で使います。今回の舞台はアメリカなので、以下はアメリカでの使い分けです。
まず jail です。これは「まだ刑が決まっていない人が入る場所」だと考えると分かりやすいです。日本でいう留置場や拘置所に近い位置づけになります。つまり、有罪だから入るとは限りません。
次に prison です。こちらは有罪が確定した人が服役する場所を指します。いちばん広く使われる一般的な単語です。ニュースでも日常会話でも、まずこれが出てきます。
そして penitentiary です。これは prison の一種ですが、響きがかたく、格式ばった語感を持ちます。アメリカの連邦刑務所では、重警備の施設が「United States Penitentiary(USP)」と呼ばれます。ただし、日常会話で「penitentiary」と言う人はあまりいません。むしろ、略した「the pen」のほうがくだけた口語として使われます。
語源を見ると、この単語の性格がよく分かります。penitentiary は penitence、つまり「悔い改め」から来ています。要するに、罰する場所ではなく反省させる場所として設計された言葉なのです。jail や prison が「閉じ込める場所」を指すのに対し、penitentiary には思想が入っています。
さらに驚き:penitentiary もペンシルベニア発祥だった
調べていて、いちばん鳥肌が立ったのがここです。世界初の本格的な penitentiary は、1829年にフィラデルフィアで開設されました。名前を「イースタン州立刑務所(Eastern State Penitentiary)」といいます。フィラデルフィアは、ペンシルベニア州の都市です。
しかも、その運営方式は「ペンシルベニア・システム」と呼ばれました。受刑者を独居させ、内省をうながす仕組みです。背景には、悔い改めによって人は救われるという当時の思想がありました。つまり、penitentiary という単語の発想そのものがペンシルベニア生まれなのです。
整理すると、こうなります。ペンシルベニアという地名がまずあり、そこで penitentiary という制度が生まれ、それが略されて「the pen」というスラングになった。そして今回、その州の刑務所に人が収監された。つながりすぎていて、少し怖いくらいです。
ただし、正確を期して補足しておきます。今回の収監先はアレンウッドの連邦矯正施設=低警備施設です。名称としては 重警備の刑務所=penitentiary そのものではありません。もっとも、「the pen」は刑務所全般を指すくだけた言い方です。ですので、言葉遊びとしては十分に成立します。
そう知ったうえで、もう一度あのフレーズを思い出してみてください。景色が変わって見えないでしょうか。
おまけ:ペンシルベニアの「ペン」も、もとは人の名前
ついでに地名の由来も調べてみました。ここでもう一段、面白い偶然が出てきます。ペンシルベニアは「ペンの森」という意味の地名です。ウィリアム・ペンという人物の名に由来します。つまり、あの州名も人名から来ているわけです。地名・スラング・擬音が、ぐるりとつながります。もちろん、ここは完全に余談です。
考察:狙って仕込まれたのか、それとも偶然か
ここで正直に書いておきます。クリエイターさんの公式な説明は、私が探した範囲では見つかりませんでした。ですので、以下はあくまで私の考察です。断定はしません。そのうえで、私は「狙っている可能性が高い」と感じています。理由は3つあります。
- 仕掛けの前例がある:この作り手は、縦読みのような遊びを実際に入れていた(前回の記事参照)
- 語感の必然性が薄い:お仕置きを表す言葉なら、ほかにも選択肢はある
- テーマとの距離感:重い実話を、軽い擬音でくるむ構造になっている
要するに、笑える言葉の下に事実を潜めているのです。そこがこの曲の深さであり、うまさだと思いました。一方で、単なる偶然という可能性も残ります。作り手が意識せず、たまたま重なっただけかもしれません。ただ、どちらであっても構わないと思っています。受け手として楽しめたことに変わりはないからです。
ミニマリスト的な学び:楽しみは「増やす」より「深める」
ここからは、私の生活寄りの話です。私はモノを増やさない生き方を選んでいます。しかし、娯楽についても同じだと最近気づきました。サブスクを増やせば、選択肢は確かに増えます。ただし、満足度はあまり上がりません。むしろ、次に何を見るか探す時間が増えるだけでした。会社員の平日の夜は、そう長くありません。
一方、今回はどうだったか。1本の動画を繰り返し見ただけですが多くの発見がありました。つまり、コンテンツも「持ちすぎない」ほうが濃くなります。数を減らして、同じものを何度も味わう。これは、モノの持ち方とまったく同じ考え方だと思いました。
今日からできるアクション
難しいことは必要ありません。次の3つの考えを今後も試そうと思っています。
- お気に入りの1本を、もう一度だけ見返す。今度は「意味」ではなく「言葉の音」に注目する
- 気になった単語を1つだけ選び、英語で検索してみる。日本語検索では出ない意味が見つかることがある
- 見つけた気づきを、共有してみる。アウトプットすると記憶に残り、次の発見にもつながる
特に2つ目がおすすめです。今回の「pen」も、英語で調べたから出てきました。日本語で「ペンペン 意味」と調べても、擬音の説明で終わってしまいます。
まとめ
「俺よりマシ」のペンについて、3つの意味を並べてみました。
- お尻ペンペンの「ペン」=日本語の擬音語
- 収監先ペンシルベニア州の「Penn」=実際の場所
- 英語スラングの「pen」=刑務所(penitentiaryの略)
おまけとして、州名の由来がウィリアム・ペンだという点も加えました。さらに、penitentiary という言葉と制度がペンシルベニア発祥だったことも分かりました。個人的には、ここが今回いちばんの収穫です。繰り返しになりますが、これは公式の解説ではありません。あくまで一視聴者の考察です。それでも、一度知ると聴こえ方が変わります。軽い擬音の下に、重い事実が沈んでいるからです。次にあの曲を聴くとき、ぜひ思い出してみてください。同じ動画が、まったく別物に感じられるはずです。
あわせて読みたい
- B子さんの「俺よりマシ」がダークなのに励まされる。”B子”の読み方の秘密にもやられた話
- B子さんの「もらいもん」が神曲すぎて泣いた。おすすめの見る順番と考察メモ
- 【人生初】YouTubeメンバーシップ加入と初コメント|「もらいもん」は4部作で完結
- 車のナンバープレートのひらがなに「じ」が使われるかどうかについて調べてみた






![お気に入りYouTube動画は端末を変えると2度おいしい|大画面とコメント欄[時間指定]の楽しみ方](https://arafuman.com/wp-content/uploads/2026/07/f404fea615b9c609aa4eddd80816bd24.jpg)

コメント