信号が点滅しはじめた瞬間、行くか止まるかで迷う。そんな数秒が、毎日のどこかにありませんか。
私は車をほとんど運転しません。移動はたいてい徒歩か自転車です。そのため、点滅信号には1日に何度も出会います。
以前は、その都度あわてて走っていました。しかし最近、ひとつだけルールを決めました。点滅信号を見たら渡らない、というだけのルールです。
すると、思っていた以上に心が静かになりました。今日はその話と、車では同じようにいかない理由を書きます。
点滅信号の前で、いつも小さく迷っていた
点滅信号の厄介なところは、判断を歩行者にゆだねてくる点です。赤なら止まります。青なら渡ります。ところが点滅は、どちらとも言い切ってくれません。
つまり、渡れそうな気もするし、間に合わない気もする。その曖昧さが、毎回ほんの少しだけ心を削ります。
しかも、迷っている間にも秒数は減っていきます。そのため、結局あわてて走り出すことになります。渡り切ったあとは、少し息が上がっています。
1回なら大したことはありません。ただし、これが1日に何度もあります。さらに、それが毎日続きます。塵のように積もっていたのだと思います。
「点滅信号なら渡らない」と先に決めた
そこで、迷うのをやめました。正確に言うと、迷う前に答えを決めておくことにしました。
点滅していたら渡らない。次の青まで待つ。それだけです。
きっかけは、単純な想像でした。もし走って渡り、そこで事故に遭ったらどうなるか。得られるものは数十秒です。一方、失うものはその先の全部です。
この釣り合わなさに気づいたとき、答えは決まりました。つまり、比べるまでもなかったのです。
効果は、思っていたものと少し違いました。安全になった実感よりも先に、頭が静かになったのです。
判断そのものを手放したからだと思います。毎回していた「間に合うかどうか」の計算が、まるごと不要になりました。
待ち時間は、せいぜい1分ほどです。もちろん、急いでいる日はもどかしく感じます。ただし、走って転ぶ可能性はゼロになりました。
これは、持ち物を減らすときの感覚とよく似ています。選択肢が減ると、迷いも一緒に減ります。情報を減らしたときにも、同じことが起きました。
自転車のときは、もっと効きました
徒歩よりも、自転車のほうが効果は大きく感じました。理由は単純です。自転車には速度があるからです。
点滅を見てから加速すると、交差点に入るころには赤になっていることもあります。しかも、そのときは止まりにくい状態になっています。
つまり、自転車は少しだけ車に近い乗り物です。だからこそ、早めに決めておく価値があります。
点滅信号は「渡り始めてはいけない」という意味だった
ルールを決めたあとで、点滅信号の意味を調べてみました。すると、自分の判断が法令とも一致していると分かりました。
道路交通法施行令では、歩行者用信号の青の点滅の意味が決められています。横断を始めてはならない、という内容です。
さらに、すでに渡り始めている場合の指示もあります。速やかに横断を終えるか、引き返すこと、とされています。
つまり、点滅は「急いで渡れ」の合図ではありません。むしろ「もう始めるな」の合図でした。
私は長いあいだ、逆に受け取っていたことになります。急かされていると感じていたのです。ところが本当は、止まる根拠を先にもらっていました。
この事実を知ってから、待つことへの後ろめたさが消えました。なぜなら、待つほうが本来の姿だからです。
車では、黄色信号で止まった車が煽られていた
では、車でも同じようにすればいいのでしょうか。私は素朴にそう思っていました。
ところが先日、気になる場面を見かけました。黄色信号できちんと止まった車が、後ろの車からクラクションを鳴らされていたのです。
止まったほうが責められている。その光景は、少し不思議に見えました。そのため、車の黄色信号についても調べてみました。
車の黄色信号は「必ず止まれ」ではなかった
法律の原則は停止、ただし例外がある
道路交通法施行令には、黄色信号の意味も定められています。原則は「停止位置を越えて進行してはならない」です。
つまり、黄色は「止まれ」が基本です。ここは歩行者と変わりません。
ただし、例外も書かれています。安全に停止することができない場合は、そのまま進行してよい、という内容です。
車には重さと速度があります。そのため、急ブレーキそのものが新しい危険になります。法律も、そこを織り込んでいるわけです。
「ジレンマゾーン」という言葉
交通の世界には「ジレンマゾーン」という言葉があります。黄色に変わった瞬間、止まっても進んでも危ない範囲のことです。
止まろうとすれば、急ブレーキになります。すると、後ろの車に追突されるおそれが出てきます。
一方、進もうとすれば、交差点の中で赤になるかもしれません。どちらを選んでも危ない。だからジレンマなのです。
先ほどの、煽られていた車。あれはおそらく、このゾーンに入っていたのだと思います。後ろの車からすれば「まさか止まるとは」だったのでしょう。
黄色になる前に決めておく
では、運転する人はどうすればいいのでしょうか。調べていて納得したのは、判断を前倒しする考え方でした。
ひとつは、歩行者用の信号を先に見る方法です。歩行者用が点滅していれば、まもなく黄色に変わります。
もうひとつは、自分の中に「決心ライン」を持つことです。たとえば停止線の手前に、目印を決めておきます。
その手前で黄色になったら、余裕を持って止まります。一方、越えてから黄色になったら、そのまま通過します。
要するに、黄色になってから考えない。この点だけは、歩行者も運転者も同じでした。
違うのはルールではなく、身軽さだった
ここまで調べて、ようやく腑に落ちました。歩行者と運転者で、心がけが違うわけではありません。違うのは、身軽さのほうです。
歩行者と自転車は、その場で止まれます。後ろに重いものも引きずっていません。つまり、いつでも「やめる」を選べます。
一方、車は簡単には止まれません。さらに、後ろの車という他人の予測まで背負っています。そのため、自分ひとりで決め切れないのです。
身軽であることの価値を、ここで初めて実感しました。抱えているものが少ないほど、立ち止まる自由は大きくなります。
これは道路の話だけではない気がします。たとえば仕事でも、抱えるものが多いほど、やめる判断は難しくなります。
以前、「安全」と「安心」は違うという話を書きました。今回の気づきも、その延長線上にありました。
点滅信号と上手につきあう、今日からできる3つのこと
最後に、今日から試せることを3つだけ書きます。
1. 点滅信号は渡らない、と先に決めておく
その場で判断しないことが肝心です。つまり、ルールを持っておけば迷いません。
2. 歩行者用の信号を先に見る
歩行者用が点滅したら、車の信号はまもなく黄色になります。そのため、運転する人はその時点で減速の準備ができます。
3. 待ち時間の使い道を決めておく
待つのが苦痛なのは、手持ち無沙汰だからです。そこで「深呼吸をひとつ」と決めておくと、1分が短く感じられます。
まとめ
点滅信号で渡らないと決めてから、移動中の焦りが減りました。得られたのは安全だけではありません。静かな頭も一緒についてきました。
一方、車の黄色信号は事情が違います。無理に止まることが、かえって危険を生む場面もあるようです。
要するに、正解は乗り物によって変わります。ただし、共通点がひとつだけあります。「黄色や点滅になってから考えない」ということです。
先に決めておく。たったそれだけで、毎日の数秒が静かになります。









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