最近、ネットで「ショートスリーパー」という言葉をよく見かけます。それをきっかけに、哺乳類の睡眠時間を調べてみました。
「1日3時間睡眠で成功した」「短い睡眠で人生が変わった」。そんな話を読むと、少しうらやましくなりますよね。忙しい会社員なら、なおさらです。
ただ、私はふと疑問に思いました。そもそも動物は、どれくらい眠っているのだろう、と。
結論から言うと、一番驚いたのはイルカの眠り方でした。そして調べ終わったとき、「哺乳類にとって睡眠は本当に大事なんだ」と改めて実感しました。
きっかけは、忙しさで体調を崩したこと
実は、私自身も睡眠には苦い経験があります。
会社員を続けるなかで、仕事が立て込んだ時期がありました。寝る時間を削る日が、何日も続いたのです。
すると、だんだん体調がおかしくなってきました。疲れが抜けず、頭もうまく回らない。そんな状態がしばらく続きました。
そこで、Fitbit Airで睡眠を記録するようになりました。
記録を続けると、いろいろなことがわかってきます。たとえば、お酒を飲んだ日は睡眠スコアがはっきり悪くなります。アルコールが入ると、数字は正直に下がるのです。
また、翌日の調子との関係も見えてきました。最低でも6時間、できれば7時間。これだけ眠れた日は、1日を快適に過ごせます。
だからこそ、「3時間睡眠で平気」という話が気になりました。本当にそんな人がいるのか。そして、ほかの動物はどうなのか。
ショートスリーパーは本当にいる?
まず、人間のショートスリーパーについてです。
結論から言うと、ショートスリーパーは実在します。ただし、ごく一部の人の「生まれつきの体質」です。
2009年、アメリカの研究チームがある遺伝子の変異を見つけました。「DEC2」という遺伝子です。この変異を持つ人は、平均6時間ほどの睡眠で元気に過ごせていました。
その後、「ADRB1」など、ほかの遺伝子も見つかっています。なかには、4時間台の睡眠で平気な家系もあるそうです。
ここで大事なのは、これが遺伝子の話だという点です。つまり、訓練で身につくものではありません。
一方で、普通の人が睡眠を削るとどうなるか。私の体験のとおり、体はしっかりサインを出してきます。「ショートスリーパーになる方法」をうのみにするのは、少し危ないと感じました。
哺乳類の睡眠時間を比べてみた
では、ほかの哺乳類はどうでしょうか。調べてみると、睡眠時間は動物によって驚くほど違いました。
| 動物 | 1日の睡眠時間(目安) | 眠り方の特徴 |
|---|---|---|
| キリン | 数時間ほど(諸説あり) | 立ったまま、細切れに眠る |
| ウマ | 約3時間 | 立ったままうとうと。深く眠るときは横になる |
| ゾウ(野生) | 約2時間 | 立ったまま眠ることが多い |
| ネコ | 約12〜16時間 | 浅い眠りをこまめに繰り返す |
| ライオン | 約15〜20時間 | 1日の大半を寝て過ごす |
| コウモリ | 約20時間 | 逆さまにぶら下がって眠る |
| イルカ | 脳を半分ずつ眠らせる | 泳ぎながら眠る |
なお、数字は研究や飼育環境によって変わります。あくまで目安として見てください。
短く眠る動物は「狙われる側」
睡眠が短いのは、キリンやウマなどの草食動物です。彼らは、いつ肉食動物に襲われるかわかりません。そのため、長く無防備に眠るわけにはいかないのです。
なかでもウマは、立ったまま眠れる体のしくみを持っています。脚の関節を固定して、倒れないようにしているのです。ただし、深く眠るときは地面に横になります。
さらに印象的だったのが、野生のゾウの研究です。2017年、アフリカで2頭のゾウを調べた研究があります。その結果、睡眠は1日平均わずか2時間でした。しかも、46時間まったく眠らない日もあったそうです。
ちなみに、この研究では活動量計をゾウの鼻に埋め込んで測ったそうです。私のFitbitと、しくみは近いのかもしれません。
長く眠る動物は「安全な側」
一方で、ライオンは1日15〜20時間も眠ります。天敵がほとんどいないので、安心して眠れるのです。また、狩りに備えて体力を温存する意味もあります。
ネコがよく眠るのも有名ですね。「寝る子」が語源という説があるほどです。ただし、眠りは浅く、物音にはすぐ反応できます。
また、コウモリは1日20時間ほど眠ります。洞窟など安全な場所で、逆さまにぶら下がって休んでいます。
要するに、睡眠時間は「どれだけ安全に眠れるか」で決まっていました。短い動物も、好きで眠りを削っているわけではないのです。
一番驚いたのは、イルカの眠り方
なかでも、いちばん興味深かったのがイルカです。
イルカは、私たちと同じ哺乳類です。そのため、肺で呼吸しなければなりません。しかも、イルカの呼吸は自動ではなく、自分の意思で行うとされています。
つまり、完全に眠ってしまうと、息ができずにおぼれてしまうのです。
脳を半分ずつ眠らせる「半球睡眠」
そこでイルカが身につけたのが、「半球睡眠」という眠り方です。脳の右半分と左半分を、交互に眠らせます。
片方の脳が眠っているあいだ、もう片方は起きています。そのため、泳ぎ続けたり、息つぎをしたりできるのです。
さらに、眠っているあいだも片目を開けています。周りの危険や仲間の位置を、見張っているのでしょう。
赤ちゃんイルカと母親は、1か月ほとんど休まない
さらに驚いたのが、生まれたばかりのイルカの話です。
2005年、イルカとシャチの親子を観察した研究があります。それによると、出産後の約1か月間、親子は普段のような休み方をほとんど見せませんでした。24時間、ずっと泳ぎ続けていたそうです。
その後、何か月もかけて、少しずつ大人と同じ休み方に戻っていきます。
もっとも、まったく眠らなかったわけではない、という見方もあります。泳ぎながら脳を少しずつ休ませていた可能性があるからです。
いずれにしても、イルカは「眠らない」道を選びませんでした。命がけの環境でも眠り方を工夫して、睡眠を手放さなかったのです。
哺乳類の睡眠時間から見えた、睡眠の大切さ
ここまで調べて、ひとつ気づいたことがあります。それは、睡眠をまったくとらない哺乳類は見つかっていない、ということです。
眠っているあいだは、敵に襲われやすくなります。イルカなら、おぼれる危険もあります。生き残るうえで、眠りは大きなリスクのはずです。
それでも、どの哺乳類も眠ります。キリンは細切れに、イルカは脳を半分ずつ。つまり、リスクを負ってでも、睡眠は削れないものなのでしょう。
実際、ラットを完全に眠らせないようにした有名な実験があります。その結果、ラットは数週間で死んでしまいました。
そして、私のFitbitの記録も、同じことを教えてくれていたのだと思います。6〜7時間眠れた日は快適で、足りない日は調子が落ちる。体は正直でした。
ショートスリーパーは、たしかに存在します。ただ、それは生まれ持った特別な体質です。多くの人にとって大切なのは、自分に必要な睡眠を知り、それを守ることではないでしょうか。
睡眠についてもっと知りたい人へ
今回調べてみて、睡眠のしくみをもう少し知りたくなりました。そこでおすすめしたいのが、『スタンフォード式 最高の睡眠』です。
著者は、スタンフォード大学で睡眠を研究してきた西野精治さん。眠りの「量」だけでなく、「質」を上げる方法がわかりやすく書かれています。
なかでも有名なのが、「眠り始めの90分が大切」という考え方です。睡眠時間を増やしにくい忙しい会社員にこそ、役立つ内容だと思います。
今日からできる、睡眠を守る3つのこと
1. まずは自分の睡眠時間を記録する
私が変われたのは、記録を始めてからでした。スマートウォッチがなくても大丈夫です。寝た時刻と起きた時刻をメモするだけでも、傾向が見えてきます。
2. 「調子がいい日」の睡眠時間を知る
そして記録がたまったら、調子がよかった日の睡眠時間を見てみましょう。私の場合は、最低6時間、できれば7時間でした。これが、自分にとっての「守るべきライン」になります。
3. 寝る前のお酒を見直してみる
お酒を飲んだ日の睡眠スコアは、私の記録でも明らかに悪くなりました。とはいえ、いきなりやめる必要はありません。たとえば、平日だけ炭酸水に置き換えるなど、できる範囲から試してみてください。
まとめ:哺乳類にとって、睡眠はやっぱり大事
ショートスリーパーという言葉から始まった、哺乳類の睡眠時間調べ。わかったのは、短く眠る動物も長く眠る動物も、みんな必死に眠りを確保しているということでした。
とくにイルカは、おぼれる危険があっても眠ることをやめませんでした。脳を半分ずつ休ませてまで、睡眠を守っているのです。
私たちも同じ哺乳類です。睡眠を削って頑張るより、しっかり眠ってから頑張る。そのほうが、きっと遠くまで走れるはずです。
今夜は少しだけ早く、布団に入ってみませんか。
参考にした研究
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